2025 TUE

04.01

RANDOM NOTES

2025.01.19

街と記憶。- 凡人エッセイ#1 –

仕事上のとある打ち合わせがあり新宿を訪れた。

新宿駅を出て甲州街道沿いにまっすぐ歩くだけで目的地につくはずだったのだけど、
某ファッション専門学校のタワー付近から地上にでてしまい、
新宿郵便局あたりをうろつき、
都庁の横で左折できず文字通り右往左往し、
なんとか20分をかけて予定の場所に着いた。
※馬鹿にされないように言っておくが僕は強いて言うなら渋谷派だ。新宿で迷っても仕方ないのだ。

東京にはこういう難しい道がある。さすがのGoogleマップ大先生もこれにはお手上げだ。

さて、無難に打ち合わせを終え、尊敬する上司と甲州街道沿いを歩いて新宿駅に向かう。

「昔はここに〇〇があって」云々、
「ここら辺でよく飲んだな」かんぬん。

上司がやたら新宿に詳しいので、

「新宿お詳しいんですね。」と聞くと、

「大分から東京出て来てはじめての職場が新宿だったんだよね。あん時貧乏だったな。」と、
返事なのか独り言なのか判断がつかない声でぼそっと呟いた。

その表情はどこか哀愁を纏い、
それでいて我が子を愛おしむかのような優しさを内包していて、
ある種の迫力を前に、僕は「へー、そうなんすね。」と間抜けな相槌を打った。

と同時に、その呟きには不思議にしっくりくるものがあった。

それは浪人時代に通っていたお茶の水(予備校があったのだ)を歩くときの感覚だった。

お茶の水駅前には渋谷のよりうんとこぢんまりとしたスクランブル交差点がある。

そこに立つと、
行き交う人がゆっくりと後ろに進み始め、
ビデオテープが巻き戻されるように当時の記憶にワープする。

以下のような事柄が走馬灯のように頭を流れ、
しばらくして今のお茶の水の街の活気と喧騒が戻ってくるのである。

・現実から逃げ出したくなって行ったカラオケで自己ベストを叩き出し、「模試の点数は全然上がらないのに!」とヤケを起こしそうになったこと

神様のばかっ!(華麗なる責任転嫁)

・一度だけみた、堀北真希似の金髪現役生のこと

だからどうと言う話ではない、ただ似ていたと言う事実をこの場を借りて発表しただけである。

・当時擦り切れるくらいまで聴いた玉置浩二の『愛なんだwith MIYAVI』のライブ映像

YouTube動画なので、擦り切れるくらいまで、というのは可笑しな表現だ

書いてみて気づいたが、呆れたもので息抜きばかりしている。


でも、息抜きも大事ですよね。

それはさておき、
その表情から、上司に感じている敬意の出自の一端を垣間見た気がして、

やはり人間には、「今振り返っても苦笑いするしかないような時期・体験」は必要なのだ、

という大変ありきたりな主張が、

このタイミングで妙に腑に落ちたのだった。

貧乏だった時を想い出す街、一向に明けない夜を想い出す音楽

そういうものを持っている人でないと、人に尊敬されるような人間にはなれないのだ!

という大袈裟な結論に至ったところでJRの改札に到着し、

「なんだか道が入り組んでいて困るなあ。」という以外には取り立てて思い入れのなかった街・新宿に、微かな親近感を感じながら電車に乗り込んだ。

\今日の言葉/

しっかり責任を持てよ。男らしくな。ハッタリでもだ!

ー映画「ジーサンズ はじめての強盗」より

\TRAYL公式SNS/
\余談/

「全員玉置浩二に影響受けてるクラスの卒業式」というこちらの動画が大好きだ。卒業生と人生が辛いという方には是非みていただきたい。